Normalisation of Life

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【多国間オープンラベルRCT】ESBL産生E. coli,K. pneumoniaeによるBSIにおいて,PIPC/TAZはMEPMに対して非劣勢を示せなかった

Effect of Piperacillin-Tazobactam vs Meropenem on 30-Day Mortality for Patients With E coli or Klebsiella pneumoniae Bloodstream Infection and Ceftriaxone Resistance
A Randomized Clinical Trial
 
JAMA. 2018;320(10):984–994. https://t.co/b1MjcSxJPn
 
Intro
ESBLは世界的な公衆衛生の懸案事項であり,2011年のCDCのデータによるとESBLによって少なくとも26,000の感染と,1,700の死亡が起こっている.
カルバペネムはESBL産生菌への治療薬として用いられてきたが,使用量が増加することによってカルバペネム耐性GNRが増加する懸念はある.
こうした懸念への対策が,カルバペネムの代替薬を再評価することであり,βラクタム+βラクタマーゼ阻害薬の合剤,例えばPIPC/TAZは取りうるオプションとして考えられてきた.ESBLはin vitroでタゾバクタムによって阻害され,感受性があることが確認されてきたからだ.
観察研究の中には臨床的に効果的であることを示した論文はあるが,結果にはばらつきがある.
よって,本研究ではPIPC/TAZがMEPMに非劣勢であるかについてP/Tに感受性のあるCTRX耐性のE. coli,Klebsiella sppに,definitive thrapyとして用いた場合で検討した.
 
Methods
Study design and inclusion/exclusion
プロトコルはAustralasian Society for Infectious Disease Clinical Research Networkによって作成された(完全なプロトコルはsupplement 1参照).
・多国間他施設オープンラベルのRCT
・対象はCTRX,CTXに耐性でP/T,MEPMに感受性の残っているE. coliとKlebsiella sppによるBSI
・感受性検査はそれぞれの施設の方法を使用
・18歳以上(シンガポールでは21歳以上)の成人,少なくとも1セット以上の血液培養陽性となった患者
・血液培養陽性から72時間以内にランダム化
・除外基準は,P/T and/or MEPMあるいは同クラスの抗菌薬に過敏性のある患者,96時間以上の生命予後が認められない患者,治癒的な意図の無い治療の場合,複数菌株による菌血症(皮膚常在菌によるコンタミネーションは除く),以前にrecruitされた患者,妊娠,授乳,同時に他のグラム陰性菌に対する抗菌薬を用いる必要がある場合
 
Study population
・9カ国(Australia,NZ,Singapore,Italy,Turkey,Lebanon,South Africa,Saudi Arabia and Canada),26病院で患者をリクルート
・期間は2014/02-2017/07
・患者はE. coliグループ,Klebsiellaグループの分類と感染源(UTI or その他),重症度(Pitt Bacteremia score* ≦4 or >4)で分類
・最重症(E2/K2)はnon UTIかつPitt Bacteremia scoreが>4点の場合
・患者は1:1にランダム化され,2人と4人の患者にブロック化し,オンラインモジュールを用いてランダム化.
 
Intervention/Follow-up
・MEPM 1g q8h iv vs PIPC/TAZ 4.5g q6h.双方30分かけて静注
・上記の薬剤はランダム化後4-14日投与され,治療期間は投与する臨床医によって決定された.
・腎機能に合わせてdoseは調節
・担当医はブラインド化されていない
 
・すべての患者はランダム化後3日目に血液培養が採取され,38℃以上の発熱を認めた場合は5日目まで再採取された
・ランダム化後30日目にフォローアップ(退院していたら電話でのフォロー)
・患者全員が血液培養採取の48時間前までに投与された抗菌薬のデータは収集(30日目までも収集)
・臨床データは血液培養陽性から毎日5日目まで収集した(+ランダム化した当日)
・5日目に担当医チームは抗菌薬を中止するか,指定された抗菌薬を継続するか,step-down therpyを選択できる
 
Definition
・経験的治療は血液培養採取からリクルートまでの治療
・経験的治療は,血液培養採取から24時間以内に開始され,検査室で感受性があることを確認された場合に”適切”と定義された
・study drugは感受性結果が得られたときにdefinitive therapyとして扱われた
 
Outcomes
・primary outcomeはランダム化後30日死亡率
・secondary outcomeは1.臨床的かつ微生物学的感染の寛解(38℃の発熱,WBX>12,000が無いことを確認し,血液培養陰性)までかかった時間,2.ランダム化後4日目の臨床的かつ微生物学的に治療成功と寛解,3.微生物学寛解(ランダム化4日目あるいはそれ以前に採取された血液培養の陰性化),4.study drugを終了後,同菌株がランダム化後30日以内に再度培養された,5.MEPMあるいはP/T耐性菌による二次感染(検体からランダム化後4から30日目までに陽性となる)あるいはCDI(下痢時にCDの試験が陽性となる)
・AEは記録,30日以内に他菌株のBSIが起こった場合も記録された.
 
Microbiological study
・陽性検体は協力機関で精査
・MICをBioMerieuxとLiofilchemで確認し,EUCASTで判定
・クラブラン酸を用いてESBLを判定
・全ゲノム解析も施行
 
Sample size Calculation
・RCTが無いためこれまでで最大の後ろ向き研究から推定
・上記は30日死亡率はカルバペネム群で16.7%であった
・死亡率14%を見込み(観察研究であり除外基準から死亡率は下がると予想された),非劣勢マージンを5%と設定した
・上記より454人が必要と破断された
・5%というマージンは感染症専門医,集中治療専門医,Australasian Society for Infectious Disease Clinical Research Networkの臨床試験専門医へのコンサルテーションで決定した
 
Statistical Analysis
・適切にランダム化され,1回以上のstudy drugを用いられた患者を対象とした
・Per protocol分析
・死亡率は絶対リスク減少率が計算された
(以下長いので省略)
 
Result
Patients
・1646人の患者がスクリーニングされ,391人(29.1%)がランダム化.12人(P/T群で8人,MEPM群で4人)が間違ってランダム化あるいはstudy drugを投与なかったため除外された.
・379人(MEPM群191人,P/T群188人)となったが,1名P/Tが投与された後に医療介入を拒否し退院した.
・よって最終的に378人となった
 
・各群でのpopulationにおける差異はほぼ無かったが,MEPM群でDM(41.4% vs 31.4%),BSI due to UTI (67.0% vs 54.8%),APACHEⅡ score (21.0 vs 17.9)がやや高かった.
・また,P/T群では免疫抑制(27.1% vs 20.9%)が多かったが,微生物学的に適切な抗菌薬を処方されるまでの時間は短かった(5.5時間 vs 9.6時間)
 
・ランダム化までに40.7%が改善を得たが,両群間での差異はなかった(MEPM群で40.3%,P/T群で41.2%)
・340人がリクルートされた段階で有意差が明らかであったために中止勧告が2017/07/08になされ,P/Tの非劣勢を示すことが困難となったため試験はterminationした.
 
Primary Outcome
・P/T群で30日死亡率は12.3%(23/187),MEPM群で3.7%(7/191)[risk difference 8.6% [1-sided 97.5% CI, -∞ to 14.5%]; P = .90]
・per protocol群内で結果は一致(P/T 18/170; 10.6% vs MEPM 7/186; 3.8%)
 
Secondary Outcome
・ランダム化4日目までの臨床的・微生物学寛解はP/Tで68.4%,MEPMで74.6%
・平均寛解までの日数はランダム化後P/Tで3日間(IQR 1.5),MEPMで2日間(IQR 1.5).差異に有意差無し
微生物学寛解,再発,二次感染やCDIは有意差なし
・P/T群でカルバペネム耐性菌の検出率が有意に低くはなかった(3.2% vs 2.1%)
・Per protocol群で結果は一致
 
Adverse events
・非致死的なAEはP/Tで2.7%,MEPMで1.6%
 
Microbiology
・306の血液検体が精査され,266がE coli,40がKlebsiellaであった
・PTの平均MICは2であった
・12(3.9%)の検体がPTにEUCASTの基準で耐性であったが,CLCIの基準では感受性があった
・99.7%はMEPMに感受性があった
(フェノタイプについては省略)
 
Discussion
・P/TはMEPMに対する非劣勢を示せなかった
・7.9%というよろうより低い死亡率は重症患者を臨床試験リクルートすることが困難であること,96時間以上の予後がない患者を除外していることを反映していると思われる
・10/379人の患者のみがhigh risk群(non UTIかつPitt Bacteremia scoreが>4点の場合)と判定された
・死亡率はUTIのほうが低かったが,非劣勢を示せなかった(検出力不足はあると思われる)
・近年のtrialで複雑性UTIではMEPMがP/Tに優位性を示した
・P/TがBSIの無いESBl産生尿路感染症において効果的かどうかは今だ不明であり,カルバペネムの代替薬を研究する必要はやはりpriorityが高い.
 
Limitation
1.血液培養の解析と感受性分析には時間がかかるためempiric therapyはコントロールできていない.
MEPMの26.2%がβラクタム/βラクタマーゼ阻害薬合剤をempriciに投与されており,P/T群の13.8%がカルバペネムを投与されていた.これらはアウトカムに最も影響する要素であるが,非劣勢方向のバイアスであると思われる.
むしろ,今回の研究はCTRX耐性がわかったときに変更するという臨床に則ったデザインとなっている
2.カルバペネム(eg ertapenem一日一回)へのstep down therapyが20.1%にde-escalationが行われている
3.複合的な感染ソースが合った場合,ソースコントロールについては不明であり,二群間の差異があった可能性がある
4.北米からの患者は2名のみでありUSに当てはまらない可能性があるが,遺伝子分析は多くがUSに多いタイプ
5.主治医によるバイアスの可能性があるが,除外されたのは123/1255のみ
6.missing dataの存在;post hocの感度分析では大きな影響がないとの結果
7.研究者はbilnd化されておらず,treatment failureと判断した場合にP/Tの早期中止に至った可能性がある.これについてはper protcol解析では結果が変わらなかった.
 
Conclusion
CTRX耐性のE. coliあるいはK. pneumoniaeによるBSIにおいて,definitive therapyとしてのP/TはMEPMに対して30日死亡率で非劣勢を示せなかった

(読んだもの) 心電図のはじめかた

 [読書目的]

研修も間近に迫り,心電図を一から御浚いしようか,と言うよくある発想.なぜ0から系の書籍にしたかと言えば,単純に国試勉強で心電図に注力しすぎるわけにも行かず,小手先で読んでいたから.以前に,3秒で心電図を読む本を読んだこともあったが,正直内容はかなり忘却してしまった…….まあ,かなり肯定的に捉えると忘れたころに残っているものが本当の勉強とも言えなくもないので,それで良いのかもしれない.

 

[読後感想]

  • 対象読者

心電図について殆ど知識がない4年生,心電図アレルギーの5-6年生,何となく読めるものの,ある程度系統だった読み方が知りたい人

 

  • 内容について

 心電図の解説本には珍しく,心電図の取り付け方や種類から解説に入り,実は初心者が疑問に思っていること/基礎の基礎だが見落としがちなことを前半で重点的に解説している.心電図本にありがちな構成と言えば,伝導系やらイオンチャネルやら診断基準やら……と心電図アレルギー持ちを即座にアナフィラキシーショックに陥らせ,意識消失に追い込むものだが,本書はその辺りに相当に気を使ったのだろう,そう言った構成にはなっていない(但し,軽快な書きぶりを目指しすぎて偶にスベっている.生暖かく流してあげよう).

 本書はそれでも後半2章に入るとそれまでの知識を総動員しなければ読み解きづらい心電図の群れが飛び出してくる.そこだけハードルが極端に上がってしまっているので,説明が省くのも玉に瑕.ただ,目的は診断基準を引き引きして唸るようなものではなく,あくまで"正常からどう外れているか",をテーマにしているのでストレスは比較的薄い.ここまで簡明に説明をしてくれているのだから,何とか着いていきたいところだ.

 ところで,本書は確かに正常からどう外れているか,は確かに伝達をしてくれるものの,どうしてそうなるのだろうと言った疑問には余り応えてくれないし,掲載されている心電図のバリエーションも少ない.と言うか,そのような分野に触れることによって心電図学が難解になることに自覚的であり,意図的に省いている.よって,アレルギーが減感作したのを実感したのなら,速やかに2冊目を探そう

  • おすすめ度

★★★★★

暴力的な心電図本が多い中で,かなりこちらに寄り添ってくれている.どうしても心電図から逃げられない場合は,頼ってみようじゃないか.

 

 

心電図のはじめかた

心電図のはじめかた

 

 

(読んだもの)いまさら誰にも聞けない医学統計の基礎のキソ 第1巻

 

[読書目的]働きだすと文献を読む頻度も増えるであろうし,自分で生み出せずとも研究結果の解釈は出来るようになりたいよね,という単純なお話.後,前回の本が脳に応えたため,簡明な本を読みたかったと言うのもあり

 

[読後感想]

  • 対象読者

統計の勉強を1つも覚えていない人,多少の知識はあってもアレルギーが抜け切らない人

 

  • 内容について

簡単すぎるくらい簡単なことしか書いてないとも言えるが,所謂僕のような大学に入って数字アレルギーに近いものを発症してしまった(中高生の時は数学が数少ない得意分野だったと言うのに)学生に向いていると思います.本当に簡単に読めるので,出来れば5年生までには目を通しておきたかった……と言うのが本音.色々避けすぎたな.

ただ,瑕疵もあって,それは分冊しすぎ.多分この内容ならせめて2分冊で良かったんじゃないか.

 

  • おすすめ度

★★★★☆

当然対象読者の知識量に依るが,アレルギー患者や知識ゼロの人間にとっては.値段がほんの少しネック

 

 

(読んだもの) 輸液のレッスン

[読書目的] 正直輸液の話はアレルギーレベルに良く分からない

 

[読後感想]

  • 対象読者

輸液はともかく,腎臓生理自体にある程度の知見がないと途中からかなり厳しい戦いを強いられることになる.むしろ生理学を学びたての学年の方が分かるんじゃないか…….

  • 内容について

序盤は輸液の話で,応用も効きやすい話がまとまっています.時折研修医レベルを超えているんじゃないか,実用的ではないんじゃないか,と思う話もありますが,許容範囲内.中盤から電解質の話になったときが困り者で流石にそれは……と思う部分もあり.適宜飛ばし読みスルー読みするスキルが求められている(気がする)

  • おすすめ度

★★★☆☆

好きになるシリーズのほうが良いかも

 

 

シチュエーションで学ぶ 輸液レッスン

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